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2024.04.30

オンライン研修のメリット5つとデメリット3つ|成功する方法も解説

新型コロナウイルスは研修にも大きな影響を与え、直接対面で行う研修だけでなく、オンラインで行う研修を取り入れる企業も増えています。インターネットを通じて場所を問わずに研修を開催できるため、離れた場所にいても研修を受けやすいだけでなく、コスト削減や事務的負担の軽減などのメリットがあります。ただし、デメリットと言える点も存在するので、メリットとデメリットの双方を知った上で準備をするのが大切です。

この記事では、オンライン研修の特徴、メリットとデメリット、研修を成功させるためのポイントについて詳しく解説します。

目次

  1. 1.オンライン研修とは
    1. 1-1.オンライン研修と集合研修・e-ラーニングの違い
  2. 2.オンライン研修のメリット・利点5つ
    1. 2-1.研修コストを削減できる
    2. 2-2.全国一律で研修できる
    3. 2-3.研修内容を何度も繰り返し確認しやすい
    4. 2-4.研修開催の事務的な負担が小さい
    5. 2-5.講師とのコミュニケーションが取りやすい
  3. 3.オンライン研修のデメリット・注意点3つ
    1. 3-1.実習やワークショップは難しい
    2. 3-2.受講者間でコミュニケーションを取りにくい
    3. 3-3.一定の通信環境やリテラシーが必要になる
  4. 4.オンライン研修に向いている企業
  5. 5.オンライン研修を企画・開催するステップ
    1. 5-1.オンライン研修の目的や研修内容を決める
    2. 5-2.必要なツールを準備する
    3. 5-3.研修の詳細を決める
    4. 5-4.受講者・関係者への告知をする
    5. 5-5.研修の実施と成果確認を行う
  6. 6.オンライン研修に成功するポイント
  7. まとめ

 

1.オンライン研修とは

オンライン研修とは、インターネットを通じて学びを提供する教育方法です。Web会議ツールを用いて開催し、受講者は物理的な場所に縛られることなく受講できます。オンライン研修はライブ配信が基本であり、講師や受講者がリアルタイムでやり取りできる形式が大半です。

従来、研修を行う際は特定の場所での集合が必須でした。しかし、研修をオンライン化すれば、パソコンやスマートフォンなどがあればどこにいても参加可能です。オンライン研修は、離れた場所にいる人も参加しやすいことに加え、時間や場所の自由度が高く、交通費が節約できるなど、多くのメリットがあります。

 

1-1.オンライン研修と集合研修・e-ラーニングの違い

研修の方法はさまざまにありますが、よくオンライン研修と比較されるのが「集合研修」と「e-ラーニング」です。オンライン研修と「集合研修」と「e-ラーニング」の主な違いは、以下の通りとなります。

【集合研修との違い】

集合研修は、受講者と講師が同じ場所に集まり直接対面で指導を受ける形式です。集合研修の最大の特徴は、参加者同士の交流が容易であること、および実技や実演が必要な研修に適している点です。しかし、研修会場費用や交通費などのコストがかかり、地理的な制約も大きいというデメリットがあります。

【e-ラーニングとの違い】

e-ラーニングは、事前に録画された教材を利用して、自分の都合のよい時間に研修を受けられる方法です。オンライン研修と異なり、リアルタイムのコミュニケーションが取りにくいものの、学習者が自分自身のペースで何度も内容を繰り返し学べるというメリットがあります。一方、受講者の疑問や質問に即時対応することが難しく、学習意欲の維持が課題となりやすいのはデメリットです。

2つの学習スタイルはそれぞれ異なる特性を持っているため、参加者のニーズに合わせた使い分けが推奨されます。

 

2.オンライン研修のメリット・利点5つ

オンライン研修は、新型コロナウイルス禍に伴い急速に導入が進みました。すでに5類感染症へ移行し規制は緩和されましたが、今後も各企業ではオンライン研修と対面研修が併用されていく可能性が高いと言えるでしょう。オンライン研修には、以下で挙げるような多くのメリットがあるためです。

 

2-1.研修コストを削減できる

従業員が会場へ足を運ぶ必要がないオンライン研修は、多くのコストを削減できます。自社の会議室や研修施設で集合研修を実施する場合、従業員の移動コストや資料・教材の印刷費が発生します。全国に支社を持つ企業の場合、交通費や宿泊費の負担も大きくなりますが、オンライン研修ならこれらの費用がかかりません。

参加人数が何人であっても、オンラインであれば大きな会場を借りる必要もなく、会場費が節約できます。また、移動に費やしていた時間を仕事に充てられれば、従業員の業務が効率化されるのもメリットです。さらに、研修資料や教材をデジタル化すれば、印刷にかかるコストや紙の資料を保管するコストも削減できます。

 

2-2.全国一律で研修できる

オンライン研修は、インターネット環境と適切な端末があれば、国内外を問わずどこからでも受講可能です。これにより、業務が忙しい従業員や地方勤務の従業員、さらには海外に駐在している従業員も含め、すべての従業員が同じ内容の研修を受けられます。

e-ラーニングも活用すれば、従業員がそれぞれ都合のよい時間を選んで研修の受講が可能です。「開催時間に都合がつけられず、研修に参加できない」という従業員が減れば、勤務地や職務による教育格差が生まれません。

また、すべての従業員が同じ教材を用い、同じ講義を受けられるため、研修のクオリティを一定に保てます。研修の質が場所や講師によって変わるという問題も解決できるのは、オンライン研修の大きなメリットです。

 

2-3.研修内容を何度も繰り返し確認しやすい

オンライン研修で一般的に使用されるウェブ会議システムには、録画機能が標準装備されています。カメラやマイクといった機材を別に用意しなくても、ライブ配信している研修動画をそのまま記録することが可能です。研修を欠席した従業員も、録画された内容を視聴すれば同様の講義を受けられます。

また、必要な部分だけをピンポイントで見返せるのも、オンライン研修のメリットです。理解がおよばなかったポイントに絞って動画を何度も再生して確認したり、動画を一時停止してその場で調査したりすれば、学習効率も格段に上がります。これは、従来の集合研修では実現が難しい、オンライン研修ならではの利点です。

 

2-4.研修開催の事務的な負担が小さい

オンライン研修は、事務的な負担を大幅に軽減できる点で大きなメリットがあります。従来の集合研修では、参加者のスケジュール調整・出欠の確認・会場手配・教材の印刷など、多くの事務作業が必要でした。

対してオンライン研修では会場確保が不要で、教材や資料もオンラインで簡単に一斉配布が可能です。教材の紛失や破損のリスクがなく、移動時の負担もなくなります。資料や教材がデジタルデータとなるため、参加人数による印刷物の不足や余剰といった問題も発生しません。

さらに、当日参加が難しい社員に向けてe-ラーニングも同時に採用すれば、受講者ごとのスケジュール調整の必要もなくなります。また、教材に修正が必要になった場合も、オンライン上でのデータ修正と共有で対応でき、物理的な回収や再配布の手間もかかりません。

 

2-5.講師とのコミュニケーションが取りやすい

オンライン研修では、Web会議ツールに備わった多彩な機能の活用により、講師と受講者間のコミュニケーションが格段に取りやすくなります。集合研修では、特に大人数の場合、受講者が講師に質問しにくいという問題がありました。

しかし、オンライン研修であればWeb会議ツールのチャット機能によって、受講者が疑問を感じたときはすぐに質問でき、講師はその質問にリアルタイムで回答可能です。受講者が大勢の視線を一身に集めず質問できるため、心理的なハードルが下がります。アンケートやリアクション機能を通じて受講者の理解度や反応をリアルタイムで把握すれば、研修内容の調整も容易です。

 

3.オンライン研修のデメリット・注意点3つ

オンライン研修には多くのメリットがある反面、いくつかのデメリットもあります。どのようなデメリットがあるかを知り、欠点を補う工夫を凝らしておけば、オンライン研修を成功に導けるでしょう。以下では、オンライン研修のデメリット・注意点を3つ解説します。

 

3-1.実習やワークショップは難しい

取得にあたって実習やワークショップが必要なスキルは、オンライン研修のみでは習得しにくい面があります。たとえば名刺交換やお客様案内といった対人スキルや、機器を使った実技などは、直接的なやり取りや特定の場所での体験が求められます。

画面越しの研修では、受講者が機器に触れたり、講師が個々の動作を直接確認して指導したりはできません。そのため、受講者と講師の間で直接的なフィードバックが難しく、オンライン研修では期待するほどの学習効果が得られない可能性があります。

実習やワークショップが必要な場合、知識の習得にはオンライン研修を活用し、実技は集合研修でカバーするなど、両方を組み合わせる方法が効果的です。エリア単位で小規模に集まるなど集合研修の規模を調整すれば、研修実施の柔軟性を高められるでしょう。

 

3-2.受講者間でコミュニケーションを取りにくい

オンライン研修では、講師と受講者のコミュニケーションは取れる一方で、受講者同士の交流が少なくなる点に注意が必要です。受講者がそれぞれ別々の場所や環境下にいるため、集合研修方式と比較すると気軽な情報交換や交流が難しくなります。特に新人研修などで同期間の仲間意識や帰属意識の醸成も目的とする場合、この点は大きな障壁になり得るでしょう。

ただ、Web会議システムのグループワーク機能を活用したり、研修後に社内SNSで反省会を開いたりするなど、工夫次第ではオンラインでも受講者間の交流を促進できます。コミュニケーションを取る機会が増えるよう、ディスカッションの時間やアイスブレイクの時間を設けましょう。

 

3-3.一定の通信環境やリテラシーが必要になる

オンライン研修では、受講者自身がそれぞれインターネット環境や必要な機器をそろえる必要があります。安定したインターネットへの接続環境やカメラ・マイクなどの機器設置、動作確認は受講前の重要なステップであり、これらの準備不足は研修の質に直結します。また、ツールやアプリのインストールおよびセットアップも、事前に完了させておかなければなりません。

しかし、普段業務でパソコンやタブレットを使用しない業種では、オンライン研修への参加がスムーズにできないことがあります。講師側もオンライン研修の運用に慣れていないと、トラブルが起こりやすくなるため注意が必要です。社内から参加する場合はもちろん、社外施設からの参加の場合でもサポート体制を整え、受講者全員が問題なく参加できるように配慮しましょう。

 

4.オンライン研修に向いている企業

オンライン研修は、企業状況や業務スタイルによっても向き不向きが分かれます。以下の特徴を持つ企業では、オンライン研修の導入が有効だと言えるでしょう。

【オンライン研修に向いている企業の特徴】

  • リモートワークを採用している、または採用を検討している
  • 複数の拠点がそれぞれ離れた位置にある
  • 部署や支店が多く、従業員の集合に時間やコストがかかる
  • 従業員の勤務時間にばらつきがある
  • 座学中心の研修を検討している
  • 従業員に継続的な学習の機会を提供したい
  • 研修による人材育成の効率化を図りたい
  • 新型コロナウイルスの影響などで研修方法の見直しが必要である

テレワークの普及に伴い働き方が多様化する中で、オンライン研修は柔軟かつ持続可能な学習環境を提供します。上記の特徴を持つ企業なら、オンライン研修によって時間や場所の制約を受けずに、効率的かつ効果的な人材育成が実現可能です。また、遠方・海外の拠点や勤務時間が不規則な従業員に対しても公平に研修を提供できるため、組織全体のスキルアップが期待できます。

 

5.オンライン研修を企画・開催するステップ

オンライン研修の開催に当たっては、事前にしっかりと計画を練り、研修スケジュールを立てなければなりません。以下では、オンライン研修を企画・開催するステップを5つに分けて解説します。それぞれのステップで必要なポイントを押さえ、研修を成功に導きましょう。

 

5-1.オンライン研修の目的や研修内容を決める

オンライン研修を成功に導く最初のステップは、研修の目的を明確にすることです。目的が曖昧だと研修の内容がぶれやすくなり、本来の趣旨とは異なる結果を招きかねません。

研修目的を設定する際は、今の課題や目標に焦点を当て、具体的に定義します。たとえば、「管理職の育成」が課題であれば、「管理職に期待される役割や行動に必要な知識・スキル、姿勢の習得」を目的とします。

次に、設定した目的を達成するための研修カリキュラムを検討しましょう。対象者や習得が求められる知識・スキルなどを明確にし、オンライン研修実施が可能か精査します。難しい場合は集合研修への切り替えや併用も検討してください。

 

5-2.必要なツールを準備する

オンライン研修を実施するためには、開催側と受講者側でそれぞれ必要なツールを準備する必要があります。なお、安定した通信環境はどちらにも必須です。

【開催側】

  • Web会議システムなどのオンライン研修ツール
  • 高性能なWebカメラ
  • ノイズキャンセリングマイク
  • 照明器具
  • 配信用PC(メインとサブの2台が望ましい)

【受講者側】

  • オンライン研修ツールをインストールした端末
  • Webカメラ
  • マイクつきイヤホンまたはヘッドセット

開催側では、リアルタイムでの配信に耐えられる高品質な機材と、受講者がスムーズに参加できるWeb会議システムが必要です。一方、受講者側には基本的なデバイスと、研修に集中できる環境の準備が求められます。いずれも、事前の接続テストや機材の動作確認は済ませておきましょう。

 

5-3.研修の詳細を決める

必要なツールが準備できたら、研修の詳細を詰めましょう。研修で使用する資料や動画、練習問題などを一通り用意し、スムーズに共有・閲覧できるか事前にチェックします。

機材の操作では、Web会議ツールの画面共有や録画、チャット機能など、実際に使う機能の確認が欠かせません。開催側はもちろん、受講者にも簡単な操作方法を事前に周知しておきましょう。

また、本番に備えてのリハーサルを行い、タイムスケジュールの確認や進行の妥当性を検証します。想定外の事態に備え、トラブル発生時の対処方法も事前準備しておくと安心です。

 

5-4.受講者・関係者への告知をする

オンライン研修をスムーズに進めるには、受講者と関係者への早めの通知が不可欠です。研修の日時・ログイン方法・研修の目的・概要を明確に伝えましょう。欠席する場合の届け出方法なども明記する必要があります。

また、事前に教材を共有したり、ツールの操作方法を説明したりすることも重要です。特に、会議システムの使用方法に不慣れな受講者へのレクチャーは欠かせません。情報は明確かつ簡潔に伝え、受講者が研修に集中できるようサポートしましょう。

 

5-5.研修の実施と成果確認を行う

研修の企画から実践、評価、改善に至るまでのPDCAサイクルを形成するために、研修終了後のフォローアップが欠かせません。受講者の満足度や学んだ内容の理解度をアンケートなどで調査し、実務における具体的な行動の変化や企業への成果の有無を定期的に確認しましょう。

研修効果測定には、「カークパトリックモデル」を用いるのが一般的です。カークパトリックモデルとは、以下の4段階で研修の効果を評価するモデルです。

1:反応 受講者は研修内容に満足したか
2:学習 受講者は研修によってどのような知識やスキルを得られたか
3:行動 受講者が学んだことを生かしてどのように行動したか
4:結果 長期的に見て研修が業績にどのような影響を与えたか

入念な成果確認により、ただ開催するだけで終わらせず、次回以降の研修プログラムを最適化できます。

 

6.オンライン研修に成功するポイント

オンライン研修は対面とは異なる環境で行われるため、いくつかの工夫が必要になります。研修の満足度と効果を最大化するには、以下のようなポイントに留意しましょう。

・原則として顔出しで参加してもらう

顔を出すことで受講者の緊張感が保たれ、集中力の維持につながります。また、講師やほかの受講者とのコミュニケーションもスムーズに行われやすく、より実りあるディスカッションが期待できるでしょう。バーチャル背景などの機能を利用すれば、プライバシーを気にせず済みます。

・講師だけでなくファシリテーターやサポート担当者をつける

研修のスムーズな進行には、ファシリテーターの存在も欠かせません。また、機材トラブルなどの不測の事態に備え、サポート担当者も配置しましょう。研修の進行や受講者への対応に割く労力が減れば、講師は講義内容に専念でき、受講者も安心して参加できます。

・対面研修と比べて細かく休憩を設ける

オンライン研修は画面を見続けるため、目の疲れなど身体的・精神的な負担が大きくなります。効果的に学習するには、40分ごとに10分程度の休憩を設けるなど、適切なインターバルを設けることが重要です。

以上のポイントを踏まえると、受講者にとっても講師にとっても成果の高いオンライン研修の実施につながるでしょう。

 

まとめ

オンライン研修は、インターネットを介してリアルタイムに行う教育方法です。従来の集合研修と比べて、コストを削減しやすく、全国一律で実施でき、事務的負担も軽い点が特長です。また、Web会議ツールの録画機能を活用すれば繰り返し学習ができ、チャット機能により講師とコミュニケーションがとりやすいメリットがあります。

一方で実習やワークショップの実施が難しい、受講者間の交流が困難、適切な通信環境やリテラシーが必要というデメリットもあります。開催するにあたってはこれらのデメリットを対策した上で、目的の明確化・適切なツールの準備・詳細の決定・事前告知・実施後の成果確認、というステップを踏みましょう。