研修の目的とゴールの決め方は?目標との違いや目的の具体例も
効果的な研修プログラムを設計し、受講者がその学びを日々の業務に活かせるようにするには、研修の目的を正しく理解し、具体的な目標を設定することが重要です。しかし、目標をどのように設定すれば効果的な研修になるのか分からないという方もいるでしょう。
当記事では、研修の目的と目標の違いや、効果的な目的設定の方法、さまざまな研修テーマ別の目的例を解説します。どのように研修を計画し、どのようなアプローチで実施すれば良いのかを学び、人材育成を進めましょう。
1. 研修の目的・ゴールとは?
効果的な研修を行うためには、得た知識がその場限りの学びにならないよう、明確な目的やゴールの設定が重要です。
研修で学ぶ内容は受講者や実施時期によって異なりますが、主に実践的なスキルアップが目的やゴールとされることが多い傾向にあります。ただし、目標達成が中途半端にならないよう、ポイントを絞った目標設定を行うことが大切です。
1-1. 目的と目標の違い
研修において、目的と目標の意味は大きく異なります。
目的とは、最終的に解決・改善したい課題やゴールのことです。研修を通じて、会社のどのような課題を解決したいのかを明確にして設定することが重要です。特に、社内研修においては業界や社会の変化によって生じている課題も取り入れ、幅広い視野を持って研修目的を検討しなければなりません。目的は、研修の内容を組み立てる上での軸となります。
目標は、目的を達成するために研修内で示す指標です。たとえば、受講者に対して求める変化や、身に付けてほしいスキルなどが挙げられます。「企画書の作成ができるようになる」「アクションを3回以上実行した」など、客観的に評価できる内容に設定してください。
目標の設定によって、目的達成までの進捗状況が可視化しやすくなります。目的の達成状況が明確であれば、社員のモチベーション維持にもつながります。
2. 研修の目的を決める方法
目的を理解した上で研修を受けると、教わった知識やスキルを現場でも正しく活用できます。研修の効果を十分に発揮するためには、組織の現状を把握し、「何を目的に研修を行うのか」を具体的に設定することが重要です。
ここでは、研修の目的を決める4つのステップについて解説します。
2-1. 現状の課題を把握する
最初に現状の課題を洗い出します。組織の課題を見つけるためには、現場の声を聞く方法が効果的です。特に、全体像を把握している管理職を対象に、ヒアリングやアンケートを実施するのがおすすめです。
業績面や人材面などについて幅広く確認し、課題を感じる部分はさらに掘り下げます。同じ新入社員でも環境や仕事内容によって課題となりうるポイントは異なり、スキルや社会人としての意識、コミュニケーション能力など、補うべき事柄は多岐にわたります。課題を洗い出せたら、優先して解決すべき課題を明確にするなど整理を行います。
2-2. 研修後の効果を決める
次に、研修後に受講者がどのように変化してほしいのかを明らかにします。
たとえば「新入社員とのコミュニケーションが不足している」という課題があったとします。この場合、新入社員が前向きにコミュニケーションが取れる状態を目指して研修を実施します。研修後は新入社員の周囲の人たちも業務がしやすくなることで研修の効果が出たと言えるでしょう。
あわせて、研修前の現状をアンケート等で測定しておくと研修後の状況との比較ができ、成果を確認しやすくなります。
2-3. 研修プロセスを決める
研修後の理想像が定まった後は、研修プロセスを決めてください。理想の状態に到達するためには、どのようなアプローチが必要か考えます。
研修とは、基本的に1回で確実な効果が期待できるものではありません。受講者の行動が変化するためには、何回実施するのがよいか、どの順番で教えていくのかといった具体的なプロセスを決め、効果的な研修を目指します。
2-4. 目的を設定する
最後に目的を設定します。研修の効果やプロセスが、目的までの延長線上にあるかを確認してください。現状の課題を踏まえて目指すべきゴールとして適切であるかも視野に入れ、検討することが重要です。目的が明確な研修になれば、研修での学びが単なる知識ではなく、実践で生かせる学びとして効果を発揮します。
さらに細かな研修内容を決める際は、目標も明確に設定することが重要です。ただし、達成できたかどうかを客観的に評価できる内容でないと、目標が形骸化してしまいます。
効果的な目標を設定するためには、SMARTの法則と呼ばれるフレームワークにあてはめる方法がおすすめできます。
以下は、SMARTの法則を構成する5つの要素です。
- 具体性があるか
- 数値化できるか
- 現実的に達成できるか
- 組織の目標や大切にしている価値観と関係しているか
- 期限が明確か
SMARTの法則を活用すると、目標が達成可能で具体的なものであるか確認しやすくなります。
3. 研修ごとの目的例
研修の目的は、誰が受けるか、何を達成したいかによって異なり、目的に応じた研修を実施することで最大限の効果が期待できます。ここでは5つの研修テーマ別に目的例を紹介します。
3-1. 新人研修
多くの企業が最初に取り入れているのが新人研修です。新人研修の主な目的は以下の通りです。
- 企業理念や業界、事業内容を理解する
- コンプライアンスの意識を持つ
- 社会人としてマインドを変化させる
- 業務に関する知識やスキルを身に付ける
- 人脈を築く
目的が幅広いため、研修方法も1つではありません。講義、グループワーク、ロールプレイングなど、目的にあわせた方法で行いましょう。今後業務を行う上での基礎となるため、研修での学びを速やかに現場で生かすことが期待されています。
3-2. 管理職研修
管理職研修では、チームの管理や他部署との連携、部下の育成などを行う立場として必要なスキルを身につけられるような内容を実施します。管理職研修の主な目的は以下の通りです。
- プレイヤーからマネージャーへ意識転換する
- 経営陣の思考を理解し、チームへ伝えられるようにする
- 部下を把握し、意欲が引き出せる環境を作る
中でも人材育成は管理職として重要な課題です。管理職になると自らの業務だけでなく、部下の特性を理解して適切な目標設定をし、チームの能力を高めることが求められます。
3-3. コンプライアンス研修
コンプライアンスとは法令を遵守するだけでなく、企業倫理や社会規範など、幅広く社会で一般的とされるルールを守ることです。コンプライアンス研修の主な目的は以下の通りです。
- ビジネスマナーや、基本的なルールを身に付ける
- 会社や個人の常識と、一般常識とのズレを防ぐ
- コンプライアンス違反によるリスクを抑える
- 企業価値を向上させる
たった1人のコンプライアンス違反で企業の信頼が失墜する可能性もあるため、コンプライアンス対策は重要な課題です。SNSの利用方法など身近なリスクも取り上げながら、定期的に研修を実施しましょう。また、ハラスメント研修もコンプライアンス研修として実施される場合があります。
3-4. 営業研修
営業研修は、主に営業担当者を対象に実施されます。営業研修の主な目的は以下の通りです。
- 営業スキルを向上させる
- 企業・組織全体の営業力を向上させる
- 営業方針や企業理念を共有する
営業研修の内容は立場によっても異なるため、階層別研修の形式を取るケースもあります。新入社員であれば基本的な営業の知識、若手から中堅であればヒアリング能力や交渉力といった利益を出すための具体的なスキルを学びます。管理職に対する研修では、部下の営業スキル向上に関わるマネジメント研修も必要です。
営業は結果が数字として表れる業務であり、研修で学んだことをすぐにアウトプットできるような姿勢が求められます。
3-5. キャリア研修
個人が自己のキャリアについて考え、設計するための研修がキャリア研修です。キャリア研修の主な目的は以下の通りです。
- 自身の役割を考え、主体的に行動する
- 将来像をイメージし、仕事のモチベーションを向上させる
現代は労働環境だけでなく、労働者の価値観も大きく変化しています。キャリアを与えられるのではなく自ら選択することで、働きがいや自己実現につながるという考え方もその1つです。労働者からも企業からも、注目が期待される研修です。
まとめ
研修を成功させるためには、目的設定から具体的なゴールの達成に向けたプロセス設計まで、一貫した戦略が必要です。目的とゴールを設定することで、ただの形式的な研修でなく、実際の業務改善やスキルアップに直結する研修を実施できます。
研修の目的は、受講者や研修テーマによっても異なります。目的や目標を立てるときは、SMARTの法則も活用しながら、実現可能で具体的なゴールを定められるようにしましょう。