研修でグループワークをする目的とは?メリットや内容の例も解説
研修では、参加者のスキル向上やチームビルディングの強化が重要目標の1つです。この目標達成のために、多くの研修プログラムではグループワークが採用されます。一方で、グループワークを単純に取り入れても、参加者が積極的な姿勢で取り組むのが難しい場合は「意味がない」と感じるケースもあるでしょう。効果的なグループワークのためには、グループワークを行う目的を参加者と共有した上で開催するのが重要です。
この記事ではグループワークをする目的やメリット、効果的なグループワークの例について解説します。
1. 研修でグループワークをする目的
研修でグループワークをする目的としては、主に下記の3点が挙げられます。
- 受講者の主体的な活動を促す
- チームビルディングやコミュニケーションの活性化を図る
- 新たな考え方を獲得し、研修効果を高める
グループワークでは、受講者同士でのグループ分けを行って、グループごとに研修テーマについて議論や発表を行います。研修内容を業務で活用してもらうには、受講者の主体的な活動を促すグループワークが適した方法です。
グループワークはグループ単位での活動を行うため、グループ内で役割分担をして目標達成を目指すチームビルディングや、コミュニケーションの活性化も実現できます。
また、グループワークではグループ内での議論だけでなく、グループ単位で出した結論を全体に発表するアウトプットの場も用意されます。新たな考え方の獲得によって研修効果を高めることも、グループワークの目的です。
2. グループワークをするメリット3つ
研修でグループワークをすることには複数のメリットがあります。社内研修などでグループワークの導入を検討している方は、グループワークのメリットを把握しておくとよいでしょう。
グループワークの代表的なメリットを3つ紹介します。
2-1. 受講者の主体性・協調性を高められる
グループワークは、設定された課題の解決をグループ単位で目指す研修であり、参加した受講者一人ひとりが主体的に活動することが求められます。研修担当者の説明を聞く座学とは異なり、グループワークでは受講者の活動によって学習が進むため、受講者の主体性を高められる点がメリットです。
また、グループがよりよい結論に到達するには、自分の意見を他人に聞いてもらい、他人の意見を聞いて、グループ全体の意見を1つにまとめる協力作業が必要です。グループ内での議論や意見の取りまとめを通じて、グループワークでは協調性も高められます。
2-2. 受講者同士のコミュニケーションを促進できる
グループワークを実施すると受講者同士が積極的に交流する場を作れるため、受講者同士のコミュニケーションを促進できます。議論を通じて、相手の意見で認めるべき部分は認め、違うと考えられる部分には意見を述べて、相互理解を深められるでしょう。
研修に参加する受講者たちは、基本的に互いをよく知らない他人同士です。グループワークでは他人同士の受講者たちが、互いに気おくれせずに意見を述べ合うことで、受講者同士の新たな関係性が築けます。
新入社員研修で受講者に同期のつながりを構築してほしいときや、チームビルディング研修などのチームワークを高める研修を行う際に、グループワークはおすすめです。
2-3. 受講者の問題解決力を養える
グループワークでは、与えられた課題の解決方法を受講者自身で考える必要があり、受講者の問題解決力を養えます。論理的思考によって問題解決を図る能力は、ビジネスにおいて欠かせない重要なスキルです。
課題の解決方法を考えるのは1人の受講者ではなく、グループの全員です。それぞれが意見を出し合い、互いの意見を比べるため、さまざまな視点での考え方に触れられて論理的思考力を鍛えられます。
さらに、グループワークではグループでまとめた結論を発表し、他のグループがまとめた結論を聞く場も設けられています。他のグループの結論に至った筋道を理解し、自分たちの結論と比較することで、自分たちと異なる考え方への理解や新しい気づきを得られるでしょう。
3. グループワークには意味がないと言われる理由
グループワークは適切に実施すれば高い効果を得られる一方で、実施する意味がないと言われるケースもあります。
グループワークを実施しても「効果がほとんどない」「無意味」になる理由としては、下記の問題が挙げられます。
- グループワークを行う目的が不明確
- 講師のファシリテーションスキル不足などが原因で話し合いが難しい場になっている
グループワークを行う目的が不明確では、グループワークを実施しても十分な効果を得られません。「受講者に主体的な活動をしてもらう」「グループのコミュニケーションを活性化させる」などの目的を定めて、グループワークを実施しましょう。
また、グループワークを円滑に進行するには、受講者の話し合いを誘導・サポートするファシリテーションスキルが講師に求められます。講師の選定において、話し合いができる環境作りのできる人材を探すことが重要です。
4. 効果的なグループワークの例
グループワークの種類としては、主に以下の4つが挙げられます。
- プレゼンテーション型
- ビジネスケース型
- 作業型
- ゲーム型
グループワークは種類によって進め方や得られる効果に違いがあるため、特徴を把握しましょう。
4種類のグループワークについて、それぞれの代表的な例を解説します。
4-1. 【プレゼンテーション型の例】社会課題についての討論
プレゼンテーション型は、設定されたテーマについてグループメンバー同士で議論して、各グループの結論を発表・評価するグループワークです。
例として社会課題についての討論であれば、下記のようなテーマを設定します。
- 日本の出生率を上げるにはどのような方法を取るべきか
- 温暖化問題に企業が1つだけ対策を実施するなら何があるか
- 首都圏と地方の経済格差はどうすれば縮められるか
社会課題は明確な正解が存在しないテーマであり、受講者たちの独自性ある意見が期待できます。
研修では、社会課題の判断材料になる基礎知識を講師が教えたのちに、メンバー同士での話し合いに誘導するとよいでしょう。
4-2. 【ビジネスケース型の例】新規事業の計画作り
ビジネスケース型はビジネスをテーマとして、ビジネス上の課題解決を目指すグループワークです。テーマは架空の設定でも、実際の事例でも構いません。
例として、「新規事業の計画作り」をテーマに設定した場合は、受講者のグループに自社を題材とした新規事業の計画を立ててもらいます。新規事業を展開する市場や業界、事業予算と競合の規模などについての情報もあらかじめ伝えておきましょう。
新規事業の計画作りでは、短期的な利益目標や実現可能性にまで踏み込んで思考させることもおすすめです。ビジネスケース型は実際のビジネスにテーマを近づけるほど、受講者のビジネスマインドを洗練させられます。
4-3. 【作業型の例】マシュマロチャレンジ
作業型は、グループ内で受講者同士が協力して、テーマに沿った成果物を作成するグループワークです。作業型の例としては「マシュマロチャレンジ」があります。
マシュマロチャレンジは、マシュマロ・パスタ・紐・マスキングテープ・ハサミを使って自立式のタワーを作り、高さを競う内容です。「テープで足場を固定してはいけない」「タワーの頂上にはマシュマロを置く、もしくはパスタに刺す」などのルールがあります。
グループワークでマシュマロチャレンジを進める際は、グループ内でタワーの建て方や高さの目標について話し合います。タワーを組み立てる最中にも、受講者同士での協力が必要となるでしょう。
作業型のグループワークは、受講者同士の共同作業により1つの成果物を作り上げることで、協調性やコミュニケーション力の向上を図れます。
4-4. 【ゲーム型の例】バースデーライン
ゲーム型は、グループ内やグループ同士で1つの遊び・ゲームを行い、競争や団結を楽しむグループワークです。ゲーム型の例として「バースデーライン」を紹介します。
バースデーラインとは、1月1日から誕生日の早い順で一列に並んで、正解を競うゲームです。ゲーム中の会話や筆談は禁止になっていて、身振り手振りだけで意思疎通をして正しい順番に並ぶ必要があります。「制限時間を設ける」「誕生日ではなく、名字のあいうえお順で並び替えをする」といったルールを決めてもよいでしょう。
ゲーム型のグループワークは受講者同士の交流を促進でき、緊張感をほぐすアイスブレイクとしても使えます。
まとめ
研修におけるグループワークは、受講者の主体性や協調性を高め、コミュニケーションを促進し、問題解決力を養うのに効果的な手法です。グループワークの中で活発な議論をする中で、チームビルディングが促進され、新たな考え方の獲得につながります。プレゼンテーション型・ビジネスケース型・作業型、ゲーム型など、さまざまな形式のグループワークがあり、学びの機会を提供します。
ただし、グループワークをなぜ行うのか分かりづらい場合や、話し合いが難しい空気ができている場合は、グループワークは効果を発揮しません。円滑にグループワークを行い、成功させるには、講師側にファシリテーションスキルが求められます。